Ⅰ 質問
凌星光 様
凌先生にお尋ねしたいのですが、「中国青年報」の付属週刊誌の「氷点週刊」が中国の歴史教科書批判を行い、当局から停刊処分を受けた問題に関して、共産党元幹部ら13人がこの当局の処分に対して、「長期にわたる悪質なメディア管理体制が一挙に露呈した」「憲法に違反する」と批判声明を出したことが、今月13日に明らかになりました。
この13人は次のとおりです。
江 平(75):元中国政法大学校長
朱厚沢(75):元中国共産党中央宣伝部長
李 鋭(89):元毛沢東秘書(この方は先日の臨時研究会で紹介された「マルクスの理論体系の基本的観点は間違っている」と述べて、公然とマルクス主義の基本原理を否定するものと批判された李鋭氏と同一人物でしょうか?)
李 普(88):元新華社副社長
何家棟(82):作家・元「工人出版社」副社長
何 方(?):元中国社会科学院日本研究所副所長
邵燕祥(73):詩人・作家
張思之(79):弁護士
呉 象(84):元「北京日報」副編集長
鐘沛璋(?):元「中国青年報」社副社長
胡績偉(89):元人民日報社長
彭 迪(?):元新華社副編集長
戴 煌(78):元新華社記者
○彼等老幹部の個々の思想・信条はどのようなものでしょうか?
○彼等は、これまで共産党に対して、どのような批判的発言をしてきたのでしょうか?また、その兆候はあったのでしょうか?
○彼等はなぜ、今回の停刊処分に当たって、批判声明をだしたのでしょうか?
○彼等は今後当局からどのような処分を受けるのでしょうか?
○彼等の出した批判声明は今後、中国にどのような影響を及ぼすのでしょうか?
凌先生のお知りになる範囲で結構ですので、教えて頂けませんでしょうか?
お忙しい中とは思いますが、宜しくお願い致します。
Ⅱ 回答
私が前回訪中時にこの事件が起こり、スタッフが抗議ストライキを起こしたため、世界の注目を集めました。これを最も早く報道した日本のマスメディアは多分共同通信で、私は北京駐在の渡辺陽介記者から記事の原文を頂き、目を通しました。それを見て、論文は問題があると思いました。というのは、清朝役人が条約を守らなかったから悪いという視点で述べられているが、それは押し付けられた不平等条約を守れということで、革命的手段は許されないということになるからです。もちろん、日本のように交渉で不平等条約を解消できればよいが、帝国主義時代においては、一般的にそれは難しい。革命的運動または暴力的手段で不平等条約を解消することも正当な手段です。私自身は論文の観点に賛成できませんが、それはあくまでも反論によって真理を追及すべきで、論争させるのではなく、行政手段で停刊処分にするのは間違っていると思います。 当局の処分に対しては多くのインテリが批判的で、その声を代表して、リタイア組みの党内有識者が憲法違反の抗議声明を出したと見ることができます。13人のうち、私と面識があり、よく討論をしたことのある人は何方氏です。(前回の報告で触れた李鋭とは正にこの李鋭氏で、同一人物です。)彼は副所長ではなく、日本研究所所長でした。元張聞天(長征時代の党書記で、毛沢東より偉かった)氏秘書で、最近、残された文献や張氏から聞いたことなどをもとに、張聞天と毛沢東の関係についての本を著しました。それは国内では出版されず、多分、香港で出版されたとおもいます。胡績偉氏は胡耀邦時代に新聞法制定に尽力した人で、最近、香港の雑誌「争鳴」によく書いています。胡耀邦の事跡など。彼が取り組んだ新聞法は、結局、今に至ってもまだ制定されていません。胡耀邦の名誉回復によって、報道関係者は胡耀邦が推進した報道の民主化が推進されるよう願っています。今回は70歳以上の「覚悟した」老人が、党員としての良心に基づき行動を起こしたのですが、その背後には多くの現役が控えています。 彼ら老幹部は立派な共産党員で、思想・信条が変わったとは思えません。ただ、間違ったものは間違ったと認め、党の再生を図るべきだと考えているのでしょう。彼らはかつて要職にあり、共産党指導部の内情にも通じています。多分、来年の第17回党大会を前にして、党内での各種論争の中で、党と国家をより民主的な方向に持っていこうとしているのでしょう。彼らが批判声明を出したからといって、当局が処分を与えるようなことはないであろう。というのは、リタイアしており、処分のしようがないからです。 批判声明は胡錦濤体制を強化させるかそれとも弱化させるか、今のところなんとも言えません。が強いて言えば、希望的観測も含めて、強化されると思われます。というのは、胡錦濤は憲法遵守、胡耀邦精神の喚起など開明的政策を取ろうとしているからです。ただ、今過渡期にあって、社会的安定が最も求められるときです。第17回大会準備の阻害要因にならないか懸念されます。

コメントする