「歴史を基礎にするな」について

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「社会科学論壇」3月上旬号が何方氏の談話「日中関係は歴史認識問題を基礎とするな」を報じたと3月28日付け読売新聞が報道した。何方氏はかつて要職にあったために、これは中国当局の新しい対応ではという憶測をよんでいる。しかしこれは当局の対日政策とは全く関係ないと見た方が正しいであろう。

何方氏はかつて元総書記だった張聞天(毛沢東よりも上であった)の秘書で、張が外交部の要職にあった頃、何は外交部弁公庁副主任をやったのであろうが、キャリア組み外交官ではない。文革終了後、彼は中国社会科学院日本研究所所長となり、定年になってからは国務院国際問題研究中心副総幹事となった。何れも著名な外交官宦郷氏(改革開放後中国社会科学院副院長)の引き立てによるものだった。彼は完全にリタイアしてもう何年にもなり、最近、批判的姿勢を強めている。氷点問題では批判者13人の一人として名を連ねた。彼は最近、張聞天と毛沢東との関係に関する著作を書いたが、国内では出版されなかったようである。毛沢東批判がかなり強くあったためであろう。そういうわけで、現当局とはかなり距離を置いていて個人プレイであろう。
 ではなぜ「社会科学論壇」が何方氏の談話を載せたのであろうか。それは次の三つの角度から説明できる。
まず日中関係の戦略的協調の重要さがある。中国国内のインテリ層には私も含めて、歴
史認識問題で日中間の戦略的協力関係が影響を受けてはならないという意見が強くあった。しかし、小泉首相の挑発によって現在のように先鋭化してしまった以上、譲歩すべきではないという意見が多数である。三・四年前には何方氏に同調する者はかなりあったが、現在では全く少数派だ。何方談話はこの潜在的同調者に火をつけようとしたものであろう。
次に出版の自由が相対的に確保されるようになった。「氷点」復刊からも分かるとおり、当局が昔のような強圧的態度に出ることはない。つまり編集担当者が弾圧され活動できなくなることはない。例え辞めさせられても、知名度が上がるため、職探しには余り困らない。かつては知名度を上げて外国に出るというパターンであったが、今は知名度を上げて国内でよりよい職を見つけるというパターンが形成されようとしている。それは報道改革が進むとなくなるから、そんなに長くは続かないだろう。
第三に、各出版物は読者を確保するために、常に特ダネ記事を載せようとする。現在、殆どの出版物が対日強硬論であるなかで、何方氏のような観点を乗せると宣伝効果は満点である。各出版物は常にすれすれのところまでリスクをおかし、当局の顔色を伺う。それは彼ら編集者が、真に一つの信念をもってやっているとはかぎらない。金と名のためが主な要因であろう。
いずれにしても、今回の「社会科学論壇」報道に政治的背景、とりわけ当局の思惑があるとは考えにくい。間もなく胡錦濤が橋本元首相をはじめとする七団体代表と会うが、何方氏の発言が当局を代表するものではないことが立証されるであろう。

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このページは、凌星光が2006年3月29日 23:31に書いたブログ記事です。

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