2006年5月20日、西北地区日本語コンテストは、五省・自治区15校が参加して、成功裏に行われた。
一 審査委員会予備会議と反響
19日午後、審査委員会予備会議が開かれ、主任張昇余(西安外国語大学東方語言文化学院院長)、副主任凌星光(福井県立大学名誉教授)、委員石田若菜(寧夏大学日本人教師)、委員山口恵美湖(青海大学日本人教師)、委員小出湧三(西安外国語大学日本人専門家)、委員霍士富(西安交通大学教授)、委員馮任遠(西安国際文化培訓学院院長)、委員翁建文(西北大学日本語科主任)、委員王紅(陝西師範大学日本語科主任)、事務局長馬永平(西安外国語大学東方語言文化学院副院長)が出席した。なお北京から来た中国教育国際交流協会代表李春利、孫家寧が列席した。
予備会議では張主任と馬事務局長から準備状況の説明、評価方法案などが示され、意見の交換が行われた。議論された主な点は次の通りである。
1 点数のつけ方と集計。事務局の提出した西北地区コンテスト評点方法をたたき台にして議論した。その結果、次のようなことを決めた。(1)公平さを保つために、最高点と最低点を除いて平均値を求める。(2)午前の既定スピーチは持ち時間を5分以内とし、5分を超過したら減点する。(3)即席スピーチは、3分に達しないまたは5分を超えた場合は減点する。(4)同点数の場合、即席スピーチの点数を優先させる。
2 即席スピーチのテーマ。もともと即席スピーチのテーマは12テーマ準備されたが、これでは多過ぎるということで、次の五テーマに絞った。(1)私の夢(2)日本人の印象(3)日本語を好きになったきっかけ(4)日本語を勉強してよかったこと(5)日本から受けた影響。
3 公正さの保持。審査委員は引率の選手に対し、即席テーマスピーチのやり方、例えば自分のテーマをくじで引いて、15分の準備時間があることを話してもかまわないが、テーマは漏らしてはならない。
選手の選び方は各大学によって異なる。例えば全校から申込者を募る、三年生に限定して選ぶ、学生全員に作文を書かせて選ぶなど。会場は周辺大学から来た日本語科学生で埋め尽くされた。学生たちの反応を個別的に聞いてみたが、今回、かなり透明性があってPR効果はよく、日本語を勉強する意欲を駆り立てることが出来たようである。ある学生は二年生で今年は資格がないが、来年、三年生になるので挑戦すると言っていた。
ここで日本人審査委員の石田、山口両女史について触れたい。二人ともジャイカから派遣されて、今年4月に、青海大学と寧夏大学に来たばかりである。二年滞在する予定で、今回のコンテストのビデオを持ち帰り、学生たちを励まし、来年のコンテストに向けて頑張ると張り切っていた。今回のコンテスト参加に当たっては、彼女らはいろいろ困難に出会ったようである。教授会議としては、こういった責任感のある若い日本人たちとの連携も密にし、今後のコンテスト改善に努めるよう提案したい。
二 閉会の辞
コンテストの状況、内容については、「閉会の辞」のなかで触れたので、それを付記する。
閉会の辞(コンテスト評価を兼ねて)
審査委員会副主任 凌星光
西北地区日本語コンテストは成功裏に終了いたしました。閉会の辞を述べるに当たって、審査に当たって感じたことを一言述べさせていただきます。
先ず日本語の表現についてですが、改革開放初期の頃と比べると、発音やアクセントがすばらしく進歩しました。なかには、日本人と殆ど変わらない発音、アクセントを発する選手も何人かいました。これは多分、殆どの大学で日本人教師がいるからだと思います。問題は熟練度です。午後の即席スピーチでは本人の実力が試されます。正しい発音、アクセントでしゃべる人は大幅に減ってきました。常日頃から、反復練習に努めることが重要です。
それから日本語の難しさは、助詞、助動詞の正しい使い方にあります。これも午後の即席スピーチで、格差が大きく出てきました。文法的に道理をわきまえることも必要ですが、理屈抜きで、日本人と正しい会話を交わす練習を重ねることがより重要かと思います。
次に内容については、次の三点を指摘したいと思います。
第一点は、限られた体験に基づく日本人の認識が多く語られました。自分の先生である日本人を通して知った、日本人の真面目さ、暖かい人間性、集団意識、読書好き、ボランティア精神などを称えていました。これは実に喜ばしいことです。日本の国民的素質は世界でもトップレベルにあり、大いに学ぶべきです。しかし、日本人もさまざまで、皆さんが接触している日本人(先生や留学生)の多くは、中国、中国人に愛着のある選ばれた日本人であるということを知っておく必要があります。よい日本人とよくない日本人、日本の国民性のよい面と悪い面の両方を知って、はじめて正しい日本観が形成され、揺るぎないものとなります。
第二点は、日本と中国との文化的相違点を述べ、相互理解を深める必要性を語った内容が少なからずありました。これはたいへん重要な着眼点だと思います。日本人と中国人は同文同種と言われますが、歴史文化の面では大きな違いがあります。それを認識することが、相手への理解と尊敬につながり、真の友人関係がつくられていきます。
第三点は、政治的に悪い日中関係と日本語を学ぶという現実との矛盾が多く語られました。これはわれわれが先輩として最も心苦しく感ずるところです。周囲の友人、親戚から冷たい目で見られる皆さんに、本当に心から同情の念を抱きます。皆さんは、このような悪い雰囲気の下で日本語を学びながらも、日本語を選択して本当によかった、点数が足らなくて第一志望の英語から日本語に回されたがそれでよかった、という貴重な体験談を聞かせてくれました。たいへん心強く感じました。日中友好関係というものは、一時的政治関係で左右されるものではありません。皆さんの長い人生の中で、現在の日本語学習が報われる時が、必ずやって来ます。
第三に、即席スピーチで感じたことですが、時間をオーバーしないように、上手にまとめる訓練をする必要があります。残り時間切迫の合図を聞いたら、言いたいことの核心部分だけを話すことのできる練習です。それには、普段から論理性のある話し方をするよう努力する必要があります。これは日本語スピーチだけでなく、何語であれ常に求められるものです。即ち、即席スピーチでは、日本語の上達ばかりでなく、話し方の論理性も求められるのです。それから午前のスピーチで、忘れてしまって沈黙が長く続いた場合が二例ほどありました。もし丸暗記ではなく、自分の言いたいことを日本語で表現する練習をしていたら、このような事態は避けられたでしょう。またそれは、午後の即席スピーチの向上にも繋がります。
最後に日中関係が好転する兆しがあることをお知らせしたい。今年に入って、日本有識者の理性的声が高まっています。小泉首相の感性政治、人気取り政治は批判されつつあります。ポスト小泉は東アジア外交重視、日中関係重視の方向に転換する可能性が大きく、来年は好転を見るでしょう。皆さんの学んでいる日本語が大いに活用できる日が間もなくやってきます。未来に自信を持って、日本語習得に努力してください。
では、これで以って、今回の日本語コンテストの終了を宣言します。皆さん、有難うございました。 2006年5月20日 (2006年6月12日整理)
三 改善すべき点について
1 学習レベルを配慮したコンテスト。
15校のうち、14校が四年生の本科生であったが、1校は私立の専科生であった。また院生も参加することができた。そのため、年齢や日本語学習期間を配慮したコンテストを行えないかという意見が出された。これは技術的な困難を伴い難しいと思われるが、将来的には二段階に分けたコンテストを検討してもよいのではないか。
2 宿泊所の不備(インターネット接続と電話)。
西安外国語大学の賓館に宿泊が設定されたが、電話をかけれない、ブロードバンドに接続できないという劣悪施設であった。使い切れない100元IPカードを買わないと市内電話もかけれない賓館など初めてだった。総経理と会いたいと申し出たが、遂に出てこなかった。聞くところによると、この総経理は昔、院長の運転手をしていた人間で、賓館を管理する素質はないとのことである。部屋の設備は質素でも構わないが、通信設備だけは整っていなくてはならない。日本との連絡が欠かせないからである。
3 遠距離教師学生のフライト利用。
青海省や寧夏自治区からきた日本人教師と選手は8時間、10数時間の列車で西安に来たとのことである。フライト券の旅費を出してくれないからである。帰りは交渉の上、飛行機で帰れるようになったようだが、値段の安い夜行フライトで、日本人教師が困っていた。一定の距離を越えた選手と教師にはフライト代を出すようにすべきだ。一人の選手は農民家庭出身で、飛行機には乗ったことがないとのこと、このような選手にこそ一生の思い出になるフライト代を出してやるべきだ。付き添いのジャイカ派遣の日本人教師は一人だったら、当然、フライトを利用したであろうが、引率学生のために同じ列車で来たとのことである。中西部の困難な地域への配慮を忘れてはならない。
4 陝西教育国際交流協会の役割不明。
西北地区担当が決まってから、先方からの連絡はなく、いつも私から連絡をする始末だ。それさえも適時に返事をもらえず、予備会議を19日の午後に行うことも、その日の午前に西安で知った。18日の夜、飛行機が大幅に遅れ、迎えに来た車が他用で帰ってしまい、連絡が取れなかったためでもあろうが、18日朝以前にメールをくれれば問題なかったはずだ。後での説明によると、19日に外国語学院が大学に変名した全校的祝賀会で忙しかったためだという。それだったら陝西教育国際交流協会のスタッフがメールを出す、または説明にきてくれてもおかしくないはずだ。全体を通じて、陝西省の協会は一体何をやったか何も見えてこない。聞くところによると、予算を牛耳っているだけで、主催校はたいへんやりにくかったとのことだ。但し、北京から来た二人は、他の地区の経験などを紹介してくれ、たいへんよい役割を果たしたと思っている。全体の仕組みを再検討する必要がある。
5 主催校の立候補制と条件検査。
西安には、外国語大が以外にも、コンテストに熱心な大学がある。今後は固定しないで、条件のある大学間の持ち回り制としたらどうか。場合によっては立候補制にし、ある程度競わせることも考えられる。それには主催校に経済的負担が余りかからないようにする必要がある。即ち、今回の成功を踏まえて、日本企業からより多くの支援を仰ぐことである。なお、カシオやJALなどは、このコンテストを利用して、かなりPR効果を上げたように思われる。ただ、現地の報道機関はそれほどではなかったように感ずる。これは現在の日中関係を反映したものであろうが、来年からは改善される可能性が高い。
6 選手及び先生たちに交流の機会を。
コンテストが終わると、選手たちと先生方はすぐに帰途に着いた。西北地区は銀州、西寧、蘭州、ウルムチなど遠くの方からやってきた。一回のコンテストと交流宴会だけではもったいない。終わったあと、先生と選手たちが交流し会う日を設けたらどうか。われわれもなるべくその交流会に出て、各大学の学生の状況を知ることが出来るし、スポンサーもよりよきPR効果を上げるヒントを得られよう。もちろん、それには一定の経費がかかるが、効果対費用からみて、決して悪いものではないと考える。

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