第16期六中全会の「社会主義和諧社会の構築」について

| | コメント(1)

第16期六中全会が10月8日から11日にかけて開かれ、「社会主義和諧社会構築に関する若干の重要問題についての決定」を採択した。これは来年の第17回党大会準備の決定であり、胡錦濤色の強い歴史的意義のあるものである。9月下旬の上海市党書記陳良宇解任と合わせて、歴史的ターニングポイントとなる第17回党大会の準備は加速化される。
まだ決定の全文は発表されていないが、コミュニケや人民日報社説などによってコメントする。

一 理論的位置づけ――共産主義理念の現実化 
 コミュニケに「社会の和諧(調和)は中国的特色の社会主義本質の属性である」と書かれたが、これは科学的社会主義に新たな解釈を与えるもので極めて重要な提起である。
中国古代の文献「周礼」には「以和邦国、以統百官、以諧万民」とある。またプラトンは「公正即ち和諧」と語った。また空想的社会主義者は「和諧制度」の構築を唱えた。マルクスとエンゲルスは共産党宣言の中で、未来の共産主義社会を「各人の自由な発展はすべての人の自由な発展の条件」としているが、それは正に和諧社会である。エンゲルスは
それを「自由の王国」とも述べた。すなわち和諧社会は人類の理想であり、共産主義理念の終極目標とも一致すると見る。これは既成概念への大きな修正である。
 というのは、今までマルクス主義の真髄は階級闘争論と見られていた。搾取のない共産主義社会を実現するためには、搾取階級を打倒しなければならず、そのためにはプロレタリアートによるブルジョアジーへの階級闘争が不可避と言うのであった。更にレーニンは帝国主義時代において、革命に成功した社会主義国は世界の資本主義国と国際的階級闘争を展開しなければならない。もし階級調和論を説くのであれば、それは修正主義として退けられた。
 それが、社会主義和諧(調和)社会構築は新時代のマルクス主義に合致する、科学的社会主義に合致すると見方を変えるのである。正に180度の大転換である。この和諧社会論によれば、和諧社会には低次元、中次元、高次元など無数の段階に分けられる。その最高段階は共産主義社会である。そこに到達するプロセスは、絶えず和諧を求めていくことであるとする。そういう意味で、和諧社会論は共産主義理論の現実化を図ったと言える。共産主義、社会主義は口先だけと言う抽象論を、現実の課題解決と結びつけることができるようにしたのである。

二 中国社会主義建設への反省
 和諧社会論の提起は、中国社会主義建設の反省から生まれた。コミュニケに中国共産党は「社会の和諧促進のために、困難な模索を行い、正反両面の経験を蓄積した」と書かれている。そこには解放後中国の歩んだ紆余曲折の道が反映されている。
先ず毛沢東時代は、建国初期には大きな成果を上げたが、1960-70年代には「プロレタリア独裁の下での継続革命」が主張され、大きな挫折を見た。政治的偏向の時代であった。
鄧小平・江沢民時代は経済建設が中心とされ、社会主義市場経済が推進された。政治主義からの脱皮が図られ、改革開放政策によって、中国経済は目覚しい発展を遂げ、国民の生活水準は向上した。しかし、経済主義、市場万能論が蔓延し、経済格差の拡大など、不均衡が顕著となった。経済的偏向の時代であった。
 今始まりつつある胡錦濤時代は、和諧社会の構築で、はじめて社会建設が主要課題とされた。コミュニケには「経済建設を中心とし、社会主義和諧社会の構築をより突出した地位におく」と書かれ、五つの関係の和諧、即ち「政党関係、民族関係、宗教関係、階層関係、海外同胞関係」の和諧が強調されている。社会的和諧模索の時代が始まったのである。
 和諧社会論はここ四年の間に、急速な発展を見た。2002年の第16回党大会では「社会がより和諧であること」と言う文言が使われた。2004年の四中全会ではじめて「社会主義和諧社会の構築」が提起された。その後、胡錦濤がこの問題についての講話を行い、基本的コンセプトとして急速に広がっていった。そして今回の決定となったのである。
 社会主義和諧論の提起は、既成概念を根本から問い直すもので、来年の第17回党大会に向けて、大きな変革準備が為されていこう。党規約の改正、党綱領の改正など、殆どすべての分野で見直しが行われ、新しい政策がとられて行こう。中央外事工作会議で見られた新動向は、明らかにその一環である。それは中国式民主社会主義形成の起点となろう。過去25年間、専制的社会主義から民主的社会主義への移行が為されたが、いよいよ民主的社会主義の幕開け時代がやってくるのである。

コメント(1)

凌星光先生

 ご無沙汰しております。以前、早稲田で谷口誠先生にお世話になっておりました関良基です。
 先生がブログを始めておられたことに最近気づき、さっそく拝読させていただきました。
 胡錦濤における「民主的社会主義」への模索、私も大いに期待をもって見守っております。
 
 本日は別件なのですが、私のブログに「北朝鮮問題のブレークスルー: 中国は鉄条網ではなく脱北者の受け入れ施設の建設を!」http://blog.goo.ne.jp/reforestation/e/7067995aa3fd9b2354d5a2cbfbd81577
 という記事を最近書いてみました。上記のアドレスです。今冬も多くの餓死者が出るだろうといわれている北朝鮮への経済制裁の有効性に疑問を持っており、それへの代替案として難民収容施設の建設を提起したものです。あまり反響はないのですが・・・。凌先生の目から見てどう思われるでしょうか?
 このプランを提起している力石定一先生(法政大学名誉教授)からも凌先生のところに直接お手紙が行くかと存じます。
 先生の目から見て、このような政策プランをどう思われるか、また実現可能性があるのか否か、ご教唆いただけると幸いに存じます。    関 良基

コメントする

このブログ記事について

このページは、凌星光が2006年10月15日 01:43に書いたブログ記事です。

ひとつ前のブログ記事は「胡錦濤外交と東アジア共同体」です。

次のブログ記事は「育ち盛りの北京「社区」」です。

最近のコンテンツはインデックスページで見られます。過去に書かれたものはアーカイブのページで見られます。