育ち盛りの北京「社区」

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教壇を去って以来、私は二ヶ月に一回の割合で中国へ飛んでいる。その都度北京の自宅に10日乃至半月ほど宿泊するのだが、毎回忙しいので、社区の居民委員会とは殆ど接触なしだ。だが、最近社区が活発な活動をしていると耳にしていたので、清掃のアルバイトでも頼もうと思い居民委員会を尋ねた。そこでは、張(桂峰)姓を名乗る副主任が、「貴方が凌星光さんですか、私があなたのマンションの担当ですので、何でも相談に乗ります」と満面に笑みを浮かべて応対してくれた。

接客態度に親近感を覚えたせいか、私の脳裏にふっと日中関係研究所訪中団の社区訪問案が浮かんだ。たいへん急な思い付きであり、提案したあと以前のように「上部の指示を仰いでから」と言うようであったら取り止めようと思っていた。ところがである。張主任は極めて前向きで、すぐさま傍らの任(煥玲)主任と相談したあと、その場でゴーサインが出た。こうして訪問団一行5人は、10月25日午後、1時間ほど「東城区和平里東河沿社区」を訪れることになった。
 任主任は30歳代の母親で、かなり難しい試験をパスしてこの職についたとのこと。それだけに、われわれの質問に対しては、滞ることなく答えてくれた。過去における末端の行政組織街道委員会と住民の間の連絡係的な居民委員会から一変して、現在のような社区建設の居民委員会になったのは2000年からだという。居民委員会には、試験にパスし、しかも住民投票で選ばれた9人の専任スタッフと3人のアルバイト職員がいる。東河沿社区は約2000世帯、人口約6000人を抱える。現在、全北京市に2500、東城区に126、和平里に26の社区があるという。
 東河沿社区には居民代表が45人おり、その中から15乃至20人の常務代表を選出、重要決定は常務代表会議で為される。経常費は一人当たり6元の計算で、街道委員会から配分される。したがって、年予算収入は約4万元(6000人×6元=3万6000元)である。「今年は嬉しい任務を課せられた」と大喜びで話してくれた。公益金として8万元(経常費の二倍)が提供され、その用途を自治体である社区が検討し方案を出すことになったという。すでに居民委員会と常務代表との協力で方案を練り上げており、後は上部の認可を待つだけだという。
 スローガンは和諧(調和)社区の建設で、社区内の調和、社会福祉サービス、医療衛生、文化教育、治安秩序など六つの委員会があって、さまざまな活動を展開している。なかでも、リタイアした高齢者対象の活動が目立っていた。かつての居民委員会はそこの住民だけで構成され、社区内の事業所は含まれていなかった。しかし、社区建設は、そこの住民と事業所が共に協力して建設することになっており、企業や小学校を含む事業所の施設も、
居民委員会の統一的配慮の下で、住民に開放されている。
 11月11日に東城区人民代表委員会の代表を選ぶ選挙が行われる。有権者の名簿が掲示板に書かれていた。遺漏者があったら申し出ることになっている。私の名前もちゃんとあった。残念ながら、11日は日本にいるため、投票には行けない。基層部ではかなり民主的な選挙が行われているようだ。中間レベルでも、候補者数が選出定数を上回る差額選挙が行われ、一応民主が確保されている。問題は最上層部である。胡耀邦によってなされた選挙制度の改革が一時後退してしまった。胡錦濤体制で再び前進することが期待される。
 ついでに、いま世界的に広がっているNPO活動やボランティア活動についても触れて見よう。数年前、アメリカで環境保護などの市民運動に従事した修士学位取得者が、自国に帰って居民委員会を動かし、環境保護運動を地域全体に広げたという業績がテレビで報道されたことを思い出す。8万元の公益金の使用に当たっては、このような海外経験者の智慧が生かされることも期待できる。それは、中国が国際社会で責任ある行動をとることに通じ、中国のイメージアップにもつながる。

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このページは、凌星光が2006年11月 3日 02:04に書いたブログ記事です。

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