「6.4風波」のビデオを見させていただき、脳裏に深く刻まれていた1989年当時の悲劇が甦った。これは中国国民にとって、とりわけ中国共産党にとって二度とあってはならぬ出来事であった。安定と発展を優先させる政策によって、「6.4風波」の風化は加速化している。しかしながら、政治改革に取り組もうとしている胡錦濤・温家宝体制としては、これを真剣に総括せざるを得ないであろう。
現に胡錦濤は、昨年、指導部内部の一部反対を押し切って、胡耀邦生誕90周年記念を行った。それにより「6.4風波」の名誉回復は半分まで為されたといえよう。しかし、それが完全に行われなかったら、共産党内部の真の和諧も社会全体の和諧もあり得ない。と言うのは、40歳以上の中国人、とりわけインテリ層を中心とした地元北京の人は、「6.4風波」の名誉回復への要望が非常に強く、その総括なくして社会主義民主政治を語ることは不可能に近いからである。
筆者が見るに、「6.4風波」の前夜、北京の秩序はたいへんよく、北京の人々の目は将来への期待に輝き、不正腐敗に染まっていた人たちは恐れおののいていた。正に市民革命を実感させるものであった。しかしそれは軍力によって制圧され、市民は空しき挫折感を味わった。不正腐敗分子は元気を取り戻し、不法資産家とグルになって、ますます大胆に国民からの収奪をやるようになったのである。当時、良心的なインテリ層は「せっかくのチャンスが台無しとなり、不正腐敗はますますひどくなる」と嘆いた。この17年間を振り返ると、この嘆き通りの道を歩んできた。経済は発展を見たけれども、社会は歪んだものになってしまい、言語を絶する不正腐敗が横行するようになった。
このような困難な局面を前にして、胡錦濤は和諧(調和の取れた)社会建設のキャッチフレーズを提起した。そして社会主義民主政治構築に向けての一連の政治改革措置を策定している。12月1日の新聞によれば、11月30日に36回目の政治局集団勉強会が開かれ、基層民主政治の発展に関する議論がなされた。席上、胡錦濤は「人民大衆の基層政治への直接参加」と「制度に依拠した」「人民大衆の民主権利の行使」を強調した。また最近、民間団体の設立が緩やかな傾向にあると聞く。上海の書記陳良宇を解任し、不正腐敗問題に本腰で取り組むと同時に、政治改革を着実に実行していこうという胡錦濤政権の姿勢が見られる。
清水美和氏の次の指摘は鋭い。「現在の腐敗の根源が政治権力を占有している共産党幹部が不動産や企業など経済資源をほしいままにして特権をむさぼることにある以上、ひたすら党の権力と統制を強化する胡政権の姿勢は自己撞着に陥っていないか。あるいは、2007年の党17回大会に向け、こうした疑問に答える処方箋が打ち出されるのであろうか。」(「人民中国の終焉」8ぺーじ)
胡錦濤は勉強会で、基層レベルでの「大衆自治」の直接民主、政治への「秩序ある参加」、「自己管理レベルの向上」などを強調しており、それは恰も「市民意識」の育成のように聞こえる。清水氏の懸念する「党の権力と統制強化」は一時的現象で、基層レベルでの社会主義民主政治構築の環境作りおよび党17回大会での処方箋を打ち出すためと位置づけられよう。
党17回大会を境に、胡錦濤体制は2期目に入る。この五年間の間に、胡錦濤は「6.4風波」の完全名誉回復を実現するであろうと人々は期待している。但しそれは、先ず実質的完全名誉回復をし、次に歴史決議として名実共に完全名誉回復を図る、の二段階を経るかも知れない。いずれにしても、名誉回復の日は、それほど遠くはないであろう。
2006年12月2日

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