4月27日、第10回人民代表大会常務委員会における裁決により、中国致公党副首席万鋼が科学技術部(省)の部長(大臣)に任命された。彼の経歴はざっと次のようなものである。
1952年生まれの上海人。1978年、東北林業学院卒。同学院で、教職に就く。翌79年から81年まで、同済大学構造理論研究所において実験力学を専攻、修士号を取得し、同大学においても教職に就く。1985年から1991年まで、ドイツのクラウスタル(Clausthal)工科大学機械科において研究に従事し、博士号を取得。
学位取得後、アウデイに就職。現場のエンジニアとして勤務。ローテーションにより、自動車工場の殆どの部門を経験。1998年、ドイツ自動車工業界のエンジニア・トップ10に選出される。また博士課程在学中に開発した自動車の騒音低減技術がフォルクスヴァーゲンに採用され、ニーダーザクセン州の特別功労十字章を授与される。
2000年12月、科学技術部と同済大学の招聘状を携えて帰国の途に着く。当時、ドイツではクリーン・エネルギーの自動車を開発していたが、それを放棄。「ドイツで作るより、中国で作りたい。国外においては専門領域の分化が著しく、ある領域の専門家になれても、総合的マネージメントの能力に欠けることになる。中国ではもっと多くのことができる」と帰国後の抱負を語る。
今回の人事は、次の三点で極めて注目すべきである。
先ず、民主党派人士が部長になったことである。建国初期には一定数の民主党派人士が部長になっていたが、1950年代後半からはなくなってしまい、現在に至っていた。今回それが破られ、中国致公党副首席の万鋼が部長となった。民主党派が一定の実権を持つと言うことは、実質的な共産党「一党独裁」の体制に穴を開けるものである。中国の今後の政治改革を占う上で極めて重要な意義がある。
次に、帰国後僅か7年で部長になったことである。ドイツ滞在中すでに中国政府と密接な連絡があったとは言え、かくも早く抜擢されたことは、海外留学組みに大きなインパクトを与えるだろう。同時にそれは国際社会からも注視され、対外関係における国際協調に資するものである。
最後に、「自主創新」(自主開発)に本腰を入れることになると思われる。中国は経済が発展したが、技術は外国のものばかりで付加価値が低いと酷評されている。万鋼はドイツ滞在中に、伝統的自動車技術は先進国に特許を独占されており、中国が入る余地はないゆえ、省エネの新自動車技術を自主開発すべきと中国政府に提案し、高く評価されたという。また、帰国後はハイブリッド・カー「超越1号」、「超越2号」を開発し実績を上げた。胡錦濤政権が万鋼を抜擢したことは、口先だけではない「自主創新」に取り組むことを意味しよう。
2007年5月10日

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