日本の研修・技能実習制度の改革について

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はじめに
 6月15日から、韓慶愈理事長の後を継いで、日中科学技術文化センターの理事長になった。研修・技能実習生の受け入れは当センターの重要な一事業で、当然、今盛んに論議されているこの制度の在り方、改革について考えざるを得ない。ここ数ヶ月、当センター関係の受け入れ企業、送り出し機関および研修・技能実習生の実態を調査した。

当センターは22年前に中国からの研修生を受け入れ、韓前理事長はパイオニア的存在であった。当時の研修生の多くは、北京大学や清華大学など中国有名校の卒業者で、現在、中国の各分野で重要な職務に就き立派な役割を果たしている。1993年に現在の研修・技能実習制度が発足してからは、研修とは名ばかりで、実体は単純労働力の導入という面が時を追ってあらわになってきた。そのため、さまざまの問題に直面することとなり、現制度の改革がホットなテーマとなった。
現在の研修・実習生制度の問題点は8年前から指摘されていた。1998年から99年にかけて、銚子水産組合の研修・技能実習生に対する違法行為が暴露され、マスコミを騒がせた。1999年10月、福井県武生の某縫製組合がやはり違法行為があり、研修・技能実習生が理事長の自宅に座り込み「殴られる」という重大事件が起きた。私の教え子(残留孤児の娘)からこの話を聞かされ、私は調査に乗り出した。そして約8000字の論文「20世紀末『女工哀史』からの教訓」、サブタイトル「中国研修生への10・14暴行事件を超えて」を書き、福井県の各新聞社及び有識者に送った。(参考資料1参照)
その後、二ヶ月余りにわたって組合理事長との間で「攻防戦」が繰り広げられ、その際、今年6月11日に成立した「外国人研修生権利ネットワーク」の代表大脇雅子弁護士(当時、社民党参議院議員)及び中国人ジャーナリスト莫邦富氏の協力も得た。大脇雅子議員は国会で取り上げてくれ、社会的影響はこれまでになく広まった。国際研修協力機構(JITCO)もたいへん重視するようになり、山崎哲夫理事を福井に派遣し問題解決に当たらせた。
私の基本的姿勢は決して研修生と企業との対立を煽るものではなく、相互の意志の疎通を図り、相互メリットのよい関係をつくっていくこと、本音と建前が大きく矛盾している法制度を改正していくことにあった。山崎理事は私のこの立場を高く評価され、是非、JITCOの機関誌「かけはし」に一文を寄せて欲しいと頼まれた。そこで私は小論「経済的合理性と国際的協調性の両立を」、サブタイトル「研修生・技能実習生の人権の尊重のもとで」を執筆し、2000年4月号に掲載された。(参考資料2参照)
その後6年間、研修生問題には殆どタッチしてこなかったが、今回の当センター実情調査を経て、研修生・技能実習生制度は若干改善されてきたが、基本的には変わっていないと認識するに至った。米国務省は6月12日、世界各国の人身売買に関する年次報告書を発表したが、その中で日本の研修・技能実習制度に触れ「強制労働の状況下に置かれている労働者がいる」と批判した。即ち、国際的にも注目される事態に至ったのである。
厚生労働省、経済産業省、法務省などそれぞれ異なった見解、改革案を持っているようだが、基本的には廃止派と改善派の二つに分かれる。筆者は改善・改革派で、世界に類のない研修・技能実習制度は多くの利点があり、先進国と発展途上国との人的交流を深め、両者の格差を縮小させていく重要な方途であると考える。それは東アジア経済共同体の中での人的交流の枠組みを作っていく雛形にもなりうると見る。ここに私見を述べ、関係諸団体及び各位の参考に資したい。

一 日本中心主義からグローバルな視点への転換
現在の日本の外国人政策は多分に日本中心主義で、グローバルな視点に欠ける。これは島国という地理的環境と歴史的に人的交流が制約されていたということと関係があろう。そこで先ず、日本の持つべき外国人労働政策の理念について述べたい。 
資本主義が発展するにつれて、物資の交流が急速に進んだ。1648年のウエストフエリア条約の締結によって、国家の主権を絶対視する国際秩序が生まれ、国境の壁は高くなった。その結果、モノは貿易という形で国際的にかなり自由に移動したが、人の国際的移動は国籍という制約を大きく受けることとなった。ところが21世紀においては、教育レベルの向上と交通手段の発達によって、また経済的法則性の定める流れによって、労働力の国際移動が急増していく趨勢にある。そして先進国と発展途上国の間での労働力移動は、両者の格差縮小に有益であることが立証されている。先進国日本は自国の状況に基いて、国際的人的交流促進の枠組みを作る必要がある。
それに加えて、日本は少子高齢化社会の到来により、若年労働者の不足が急速に進みつつある。日本の今後の経済社会の発展を考えた場合、外国人労働者の受け入れは不可避の状況にある。治安の悪化や日本人雇用への悪影響を口実に極力回避しようとする今までの姿勢は、必然的に崩れざるを得ない。産業構造の高度化による国際分業最適化もまた経済法則性の定めるところだからである。但しそれは一定のプロセスを必要とし、漸進的移行過程でなくてはならない。日本の斜陽産業において、外国人労働力の導入によってその調整プロセスの緩和を図ることもそれなりに必要なことである。時代の流れに逆行すると一口で否定できるものではない。
更に、日本のものづくり技術を如何に発展途上国に伝授するかも大きな課題である。日本の競争力を削いでしまうという見方もあるが、それは余りにも国際的視野に欠ける。もちろん、日本の若い青年に伝授する必要があるが、その後継者がいなくて困っているのが実情だ。技能が喪失してしまうよりも、外国人労働者でもよいから受け継いで欲しいと言う日本の技師・職人は多い。ヨーロッパの近代工業技術が米国にわたり、米国の技術が日本にわたった。日本の工業技術がアジア諸国に伝授されるのは必然的成り行きであり、人類への貢献でもある。積極的伝授によって日本の活力を維持発展させる選択を考えるべきだ。
最近の東アジアの動きを見た場合、日本が一国主義から東アジア共同体意識に変わることも重要だ。東南アジア及び中国において、国際的人的交流はこれまでになく盛んとなっている。即ち、東アジアの発展途上国間で経済交流が進み、それに伴って人的往来が頻繁となっている。但し、経済的社会的効果を考えた場合、最も重要なのは先進国日本と東アジア発展途上国との人的交流を促すことである。1980、90年代において、日本は国際化が掛け声となり、対外交流が大きく前進した。しかし「失われた十年」の中で、日本ナショナリズムが高揚し、国際主義は一歩後退した。即ち、日本の持つ閉鎖性が顕著となり、国際的人的交流の阻害要因となってきた。今こそはそれから脱皮し、東アジアでの人的交流に模範的役割を果たすべきである。そして国際的人的交流の東アジアモデルを構築するという高い理念を持ち、リーダーシップを発揮すべきであろう。

現実を見た場合、日本の国際的人的交流は次の四重層が考えられる。第一層は教授や専門家などハイレベル層の日本での就職である。これについては何の障害もない。第二層は大学卒業生の日本での就業である。中国について言えば、ここ数年、大量に大学生を養成し、いまその雇用に頭を悩ましている。他方、日本では理工系を中心に技術者の不足に悩んでいる。したがって、この層の人的交流は不可避の流れとなっている。第三層は職業高校の卒業生である。研修生(研修労働者)として、期限付けで(例えば三年)、日本で働きながら研修する。研修生は労働サービス提供の義務があり、企業は報酬支払いと技能移転の義務を負う。第四層は単純労働力の導入である。初級中学または高校卒業生で、マネー稼ぎだけを目的とする。受け入れ企業は報酬支払いの義務は負うが、技能移転の義務は負わない。
現在日本は、基本的に後三者レベルを認めず、第一レベルの入国だけを認めている。ただ、前述の労働力不足の必要性から、研修・技能実習生制度と日系人の就労自由化という方策を取って、後二者を限定的に入国させてきた。外国人政策を見直して、四層それぞれの労働者・人材の導入が行われやすいよう整備する必要がある。また、第一層と第二層はもちろんのこと、第三層と第四層においても、一定の条件を満たした者(例えば就職先がある、日本語が1級レベルに達する、日本滞在10年以上など)には、永住権を与えることが望ましい。
日本の国際的人的交流の仕組みを考える場合、日本の都合ばかりでなく、相手国の状況も配慮する必要がある。中国について言えば、研修・技能実習生の送り出し機関は次の三つの系統からなっている。科学技術部、商務部、労働社会保障部である。ハイレベル専門家の派遣は、主として教育部と専家局(専門家局)を通して行われる。中国のこれら機関は、それぞれ日本の厚生労働省、経済産業省、法務省、文部科学省などに対応する。何れも縦割り組織で、縄張り争いがあって好ましくない。日中双方の有識者によって統一的機構設立を検討し、新しい仕組みを構築することが望まれる。
 
二 現行制度の基本的問題点と解決方向
現在の研修・技能実習生制度は、基本的に制度的欠陥と研修実習生への認識不足の二つの問題が存在する。
制度的欠陥は、すでに多くの識者が指摘しているところだが、建前と本音の乖離にある。1993年に現制度ができる前にも、研修生の受け入れは行われていた。それは真の研修生で、期間は半年か1年であった。それが1993年の研修・技能実習制度ができるとともに、「技術移転という国際貢献が目的」という建前と、低賃金労働者導入という本音の乖離現象が起きた。それは近年になって低賃金労働者に変質したと言うものではなく、当初から低賃金労働者の導入が目的であった。1990年代初め、日本は深刻な労働力不足に見舞われ、業界の切実な願いを聞き入れて、研修・技能実習生制度を発足させたのである。筆者はこの矛盾を前述の1999年論文ですでに指摘したところであるが、今もって大きな改善が見られていない。今に至っては遅きに失した感があるが、十分な議論を経て抜本的改革を施せば、現在のマイナスイメージを変えることは十分可能であると考える。
研修・実習生への認識不足とは、経済的視点のみが先行し、文化的教育的利益が余り顧みられないということである。関係諸機関(送り出し機関、第一次受け入れ機関、受け入れ企業)は専ら経済的利益を追求し、研修生への思いやりに欠けるのが現状だ。ひどい場合には、違法行為があるばかりでなく、基本的人権を侵すことさえある。また研修・実習生自身も専らマネー稼ぎに関心があり、残業のあることを望む。そのため、本来の研修・実習生制度のあるべき「経済的利益+技能移転+文化・教育メリット」は形骸化している。諸施策を講じて、現状を変えていかなくてはならない。これについては後述するとし、ここでは制度的改革について私見を述べる。
現在の研修・実習生制度を労働実習制度と労働研修制度の二つに分けるよう提案したい。前者は厚生労働省の提案に近く、後者は経済産業省の提案に近い。但し、何れも世界にない期限付き労働力導入制度である。労働実習制度は主として中学、高校卒業の単純労働力を導入するもので、零細企業で構成される協同組合が主たる受け入れ機関となる。日本語能力については余り高いものを要求せず、専らまじめに働き、規律を守ることが求められる。
労働研修制度は、技能労働者(職業高校を卒業した技能労働者)と技術者(大学卒業の技師)に適用し、主として大企業や中堅企業(特殊技術を持つ中小企業を含む)が受け入れる。日本語は原則として入国前に国家検定試験の二級レベル以上が要求される。日本滞在期間は何れも三年以内とし、企業と研修・技能実習生が望む場合には二年間延長できるようにする。一定の条件(言語、品性など)をクリアした研修・技能実習生には定住を許可する道も開く。
ここで重要なことは、日本企業が研修・技能実習生を受け入れるというのは、双方の相互メリットによるものであることを法規に明記することだ。「技術移転による国際貢献」ということで、恰も日本側が発展途上国に恩恵を与えているだけというような言い回しは事実にもとる。もちろん、技術移転や日本の先進的仕組みは外国人労働者にそれなりの影響を与えることは間違いない。とりわけ、日本の実情を見て見識を広めたいという向学心のある者には、一生のよき思い出となる三年間になるであろう。日本政府と企業は、日本文化の伝播という視点から、彼らが学びやすい仕組み、環境を作る必要がある。
研修・技能実習生への不法処遇がよく新聞に報道され、恰もこの制度は極めて悪いもので廃止されるべきという世論が形成されつつある。しかし、よき組合、よき企業が多数を占め、それなりの役割を果たしている。当センター関連のS企業においては、まだ改善すべきところはあるが、企業側も研修・技能実習生も基本的に満足しており、その成果は明らかである。
また福井の山間の70歳代の老夫婦は、組合を通じて三人の研修・技能実習生を受け入れ、本来は廃業となるべき縫製業が維持されている。研修生と家族のような生活を送ることによって、老夫婦は意義ある晩年を送れるし、研修生は日本での生活を体験した。これは福井テレビが密着取材して、今年6月21日にすでに放送された。テーマは「互恵の糸――山里の中国人研修生を追って」である。このような事例は少なくない。一部の悪徳業者を取り締まる仕組みを作るべきだが、現行制度の合理的なよき面も積極的な評価されるべきである。
研修生問題で法律違反がよく報道されるが、法律自体が実情に合わない場合もある。労働基準法と最低賃金の基本的精神は研修・技能実習生制度において体現されるべきだが、そのまま研修生と実習生に適用すると無理が発生する。研修・技能実習生は定住権を持たない期限付き労働者であるゆえ、言語不自由、習慣の違い、さらには送り出し機関の責任なども考慮して、それ相応の配慮が必要である。労働基準法に一項を設け、外国人の研修・技能実習生については別途法律の定めに従うとするのも一法だ。なお、研修・技能実習生が労働組合を作ったり、加入したりすることは不適当である。その代わり、地域ごとに権益保護のネットワークをつくり、コミュニケーションを密にすべきである。本来、第一次受け入れ機関やJITCOによって受け入れ企業の法律厳守を徹底させるべきだが、実際には手が回らないのが実情のようだ。ネットワークはそれを補完するものとなる。
 
三 具体的問題点と解決策
 研修・技能実習生の応募目的はさまざまである。お金を稼ぐだけでよいという者もいれば、いろいろ勉強したいと向学心のある者もいる。前者に重点を置く応募者が多いが、一般に勉強もしたいという気持ちも持っている。関係諸機関のなすべき課題は、その勉強意欲を定着させる仕組みを創出することである。即ち、研修・技能実習生たちが目先の利益だけでなく、全人生における長期的利益を重視するように導くことである。それが日本の影響力増大と日中関係改善に繋がる。
 送り出し機関、第一次受け入れ機関、受け入れ企業など諸機関及びJITCOは、一般的に懲罰主義に陥りやすく、教育的視点と公益的視点に欠ける。研修・技能実習生が問題を起こすと、すぐに送り返すという方法を取ろうとする。なぜ問題が起きたか、どのように改善したらよいか、研修・技能実習生への精神的影響はどうかなどは殆ど関知せず、ひたすら「不良商品」として突き返そうとする。このように研修・技能実習生を単なる「労働力商品」と見ることは非人道的であり、日本のイメージを悪くさせる。若い青年たちには、常に教育を重視し、思いやりのある対応をしなくてはならない。
 以上は一般論であるが、次に、各機関及び地域社会のなすべきことについて述べてみたい。
1 研修・技能実習生を送り出す中国派遣企業は形骸化している場合が多い。実際には送り出し機関がすべてを行い、日本の法律の要求にもとづいて、既存企業の名義を借りているだけの場合が多い。そのため日本の大使館から確認の電話を派遣企業に入れると嘘がばれるということが多々発生する。このような確認電話は全く意味のないことである。現在の中国での実情に合わせて、法律を変えるべきである。前述の労働実習制と労働研修制の二本立てとした場合、前者については在職企業を必要とせず、送り出し機関で十分に対応できる。後者については中国の企業もしくは学校を該当者とすることが考えられる。
2 中国の送り先機関について言えば、募集・選抜と事前教育の面で不十分なところが多々ある。一つは研修申込者に日本の研修・技能実習制度を十分に説明していないことである。つまり、建前は研修であるが、実際には労働であるという真実を語っていない場合が多い。そのため、日本に来てから「騙された」という感じを受ける者が出てくる。ある研修生は、「労働力を売っているだけだ、何の研修もない、騙された」と言ってはばからない。
二つ目としては日本語の事前教育が不十分である。三ヶ月の集中授業を行っているところは一定のレベルに達するが、働きながら日本語を学ぶ場合は効果が小さい。つまり、どれだけの時間を費やし日本語を習ったと時間数を強調しても、実にいい加減な勉強である場合が多い。
三つ目は日本に来てからのケアが不十分である。専門スタッフを置いて、定期的に巡回し、研修生の事情を把握しているところは極めて良好な状況にある。しかし、ケアの不十分なところは問題を起こしやすい。
四つ目に、研修・技能実習生に規律順守を要求する場合、その利害関係を説いて納得させるのではなく、往々にして罰則でもって対応しようとする。このような手法は研修生たちの反感を買っている。規律を自発的に守るよう導かなくてはならない。
 ここで是非紹介したいのは、中国威海L公司の行き届いた教育とケアである。とりわけ研修・技能実習生の父兄や家族と密接な連携を保って、マインドケアを行っていることは推奨するに値する。(資料三参照)それに対し、一部地方では、研修・技能実習生派遣資格保有者が一定のコミッションを取って名義を貸しているだけという状況が普遍化している。中国での送り出し機関の競争が激化する中、多くの弊害が生じている。整理整頓が必要だ。
3 当センターのような第一次受け入れ機関は、送り出し機関と受け入れ企業の実態を把握し、研修・技能実習生を扱う体制ができているかどうかを綿密にチェックしなくてはならない。また日本での研修・技能実習生制度を真に理解するよう常に説明しなければならない。それは法律順守の監督機能を発揮すると同時に、送り出し機関と受け入れ企業に協力して、絶えずサービスの改善を図るよう努力しなくてはならない。それによってはじめて、送り出し機関、第一次受け入れ機関、受け入れ企業の三者が協力していくよき制度的枠組みが構築されていく。当然のことながら、研修・技能実習生との連絡を密にする仕組みも作ることが不可欠だ。
 4 受け入れ企業は、研修・技能実習生への人間的対応が求められる。とりわけ、研修生の人権尊重と学習意欲歓迎の態度が肝要だ。日本の上場企業S社は、約150人の研修生を受け入れているが、たいへんよい対応をしている。企業と研修生の信頼関係が確立され、両方から喜ばれる好ましい仕組みが形成された。(資料四参照)このようなよき経験を広くPRすべきだが、残念なことに、研修生のイメージが余りにも悪いため、この企業はマスコミで取り上げられることを余り好まない。
 受け入れ企業の改善すべき点としては、次の幾つかが挙げられる。
(1)インターネットの接続。研修生は日本でお金を稼ぐと、高価でも先ずパソコンを買おうとする。実に立派なことである。上場会社S社では、約四分の一の研修・技能実習生がパソコンを持っている。ところが、送り出し機関と受け入れ企業はインターネット接続を禁止しているとのことだ。これは実に理不尽なことである。理由は通信費用の問題や外部との接触で悪い影響を受け逃亡するのではないかという懸念にあるようだ。逃亡を防ぐには環境を改善すべきである。研修・技能実習生はみな成人であり、基本的に信頼すべきで、むしろパソコンを有意義に使うよう積極的に引導していくべきであろう。中国の若者の多くはパソコンを使ってインターネット情報を得ている。先進国日本でインターネットにつなげないと言うのは日本の恥となる。研修・技能実習生と一緒に働いている日本人の中には、中国への認識がたいへん乏しく、彼らがパソコンを買うのは贅沢だと思っている者もいる。
(2)恋愛不可問題。送り出し機関と受け入れ企業が一緒になって、三年間恋愛をしないことを誓約させているところがある。これは中国の憲法に違反し、日本の憲法にも反する。研修生の多くは20-25歳で、青春時代を日本で過ごす。健全な恋愛によって、お互いに励ましあうのであれば、研修生活がより充実したものになり、企業にとっても好ましいはずだ。もちろん、異性を自分の集団部屋に連れ込むような規律違反は厳禁すべきで、このような事態が起こる前にしっかりした規律教育を常に行う必要がある。
研修・技能実習生を志願したことは、三年間の恋愛を自発的に放棄する選択をしたことで、法律違反ではないという見方もある。しかし、弱者の立場にある研修・技能実習生にとっては「自発的選択」とは言えない面が多分にある。恋愛をしないで研修に心身を集中させるよう提唱するのはよいが、誓約させるのはやはり問題だと考える。
(3)残業と学習の両構え。研修・技能実習生はお金を稼ぐために残業を求める。企業も残業によって生産を高めようとする。しかし、景気に左右されて、残業がない時も出てくる。常日頃から、残業がない場合は学習するという心構えを持つよう導くべきだ。企業はそのための条件作りに心を配る必要がある。応募した際、残業でどれだけ稼げるなど甘い言葉によって過度の期待を抱かせると、それが実現できなかった時の失望が大きく、精神的不安定を招くことになる。あるパソコンを持つ実習生は、残業がなければないで、パソコンを使う時間が増えると、極めて健全な心構えができていた。研修・技能実習生全体をこのような方向に導くことが望ましいと考える。
(4)研修・技能実習生の夢を大切に。約半分くらいの研修生は、お金を稼ぐ以外に、かなりしっかりした夢を持っている。最近、日本に来た22人の研修・技能実習生に聞いてみたところ、日本語の先生になりたい、小説家になりたい、ガイドになりたいなどさまざまの夢が語られた。それはマニュアル回答であるかもしれないが、夢を語ることはよいことだ。お金稼ぎ以外の目標が余りはっきりしていない研修・技能実習生も、その多くは日本語を身に付けたいという願望を持っている。しかし現実の研修・実習生活のなかで、初期の願望・志向を徐々に喪失していくのが現実のようだ。その夢を追い続けるような条件を整備することが求められる。
(5)問題処理は慎重に(正攻法)。三年間、異国で制約を受けながら青春を過ごすことは決して楽なことではない。さまざまな問題を起こしやすい。その場合、企業は送り返すことによってことを済ませようとする。また、送り返す手法としては、「逃亡」を恐れて、出し抜き通知を行って半ば強制的に送り帰そうとする。これは本人に一生の悪い思い出を残すもので好ましくない。精神異常または犯罪行為など特別の理由がない限り、本人に帰国させざるを得ない理由をよく説明し、基本的に納得するように努めるべきだ。「もぐる」というリスクがあるにしても、本人の在日生活体験がなるべく良い思い出となるように、正攻法で対応するのが望ましい。
5 日本語教育と学習の改善(JITCOの役割)。
 研修・技能実習生に問題が起こる最も大きな原因は、日本語レベルが低く、意思の疎通が図れないことにある。来日に当たっては、三ヶ月の日本語学習が前提条件となっているが、それだけではとても不十分で、来日後、引き続き学ぼうとする研修・技能実習生を支援する必要がある。
(1)日本語学習の奨励策。来日後の日本語学習は第一次受け入れ機関と受け入れ企業が担うべきものであるが、JITCOが民間レベルで全体的な仕組みを作るのを支援することが考えられる。例えば日本語コンテストなどを組織して日本語学習のインセンティブ与えるというように。
(2)民間のネットによる統一教育への支援。研修・技能実習生は全国に分散していて、企業の受け入れ人数が少ない場合が多く、中小・零細企業が日本語学習を支援しようとしても、経済的負担が大き過ぎてやれないのが実情だ。そこでパソコンを使用したインターネットによる組織的教育を行う枠組みづくりが考えられる。
(3)民間の日本語研修センターを支援。研修生が日本に来てから、日本の習慣や安全の教育もかねて、一ヶ月の日本語教育をやっている日本語研修センターがあちこちに存在する。その中にはたいへんよく行われているものがあり(資料五参照)、それらを組織化して支援体制を作ることが考えられる。
(4)民間の研修生ケアマンネットワーク(資格)構築の支援。研修・技能実習生と受け入れ企業との間の意思疎通を図るための研修生ケアマン(日本滞在期間の長い外国人留学生などを活用)を各地におき、定期的に組合や企業を巡回したり、必要に応じて赴くようにしたりする。それに対し組合または企業は一定の報酬を支給するようにする。
 6 研修・技能実習生支援ネットワークの構築(市民社会の役割)。
(1)企業によっては、日本人社員やその家族が集まって、研修・技能実習生との集いを持ったりしている。それは彼らへの心の癒しとなるばかりでなく、日本文化の伝播という効果もある。会社のトップクラスが、社員のこのような積極的動きを奨励することが望まれる。
(2)受け入れ企業には研修生が外部と接触することを恐れて、閉鎖状態に置こうとするところもある。その結果、研修生は不満を抱き、閉鎖状態を突破しようとして、両者の関係は悪循環に陥る。地域社会のボランティア組織を活用して、研修生と地域社会との関係を密接にし、企業、地域社会、研修生の三者が一体化した仕組みを作ることが考えられる。
(3)研修・技能実習生は弱者であり、しかも労働組合を作ることもできない。彼らの権益を保護するには、政府及び関連機関による監督を強化すると同時に、前述した「外国人研修生権利ネットワーク」のような、有識者からなる研修・技能実習生権利保護ネットワークを構築する必要がある。それは単に企業と研修・技能実習生との対立を煽るのではなく、相互メリットの枠組みをつくり、それを厳守させるものでなくてはならない。つまり重要な補完的役割を果たすのである。

結び
経済のグローバル化が進む中、人的交流の国際化は避けられない。但し人間は物質とは異なる。秩序ある文明的移動と交流が求められる。
ヨーロッパは高度成長期に中近東諸国から若年労働者を移民させ、当時においてはよき効果を収めた。しかし、今になっては、多くの社会問題を引き起こしている。また忘れてはならないことは、若年労働者出身国の経済的発展にほとんど貢献していないことである。それに対し、日本の研修・技能実習制度は、日本社会の安定を確保できると同時に、研修生出身国の経済発展に貢献している。正に世界的意義のある試みを実行しているのである。不十分なところは改善すべきだが、制度そのものを廃止すべきではない。韓国が廃止したとしても、日本がそれに習う必要はない。アメリカから非難されているが、それは実情をよく理解していないからで、実態調査を公にすれば自然に収まる。
現在、研修生の7、8割が中国からきている。日中間でよき仕組みが形成されれば、東アジア全体に通用する仕組みがつくりやすくなる。高度成長を続ける中国は、若年労働力の不足と人民元レート上昇によって、外貨建て賃金コストは次第に高まっていく。(資料六参照)遠くない将来において、中国は研修生受入国になろう。日中間で模索される仕組みは、今後の中国によき経験を与えることになる。日本の研修・技能実習制度の改革は、日中関係の深化、東アジア経済共同体モデルの構築、南北格差の縮小という高い次元に立って行われるべきである。
そのために、最後に、日本の関係部門、中国の関係部門及び両国の専門家による国際シンポジウムを、日本と中国の両方で開くよう提案したい。
2007年7月14日

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このページは、凌星光が2007年7月14日 16:17に書いたブログ記事です。

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