1)NEASE-Netを再認識するに至った。ロシア通商代表部副主席ナボーコフ氏、韓国東北アジア知識人連帯(NAIS-Korea)代表、若きモンゴル大使ジグジッド氏の流暢な日本語での発言を聞いた。東北大学北東アジア研究所はロシアと深い関係をもつなど、日本国内諸団体のもつ素晴らしい海外コネと活躍ぶりを知った。
2)自分は半分、中国を代表できる。中国社会科学院世界経済政治研究所研究員(教授)で、二ヶ月に一回帰国し意見交換している。中国ではすでにリタイアしたが、実際には現役に劣らない仕事をしている。最近は日中関係改善に力点をおいたため、東アジアの研究は疎かになっているが、一応フオローはしている。
(毛利和子先生の基調講演関連についてのコメント――毛利先生の「現代東アジアのアジア性」に基本的に賛成。)
1「現代アジア学」についての二つの視点。純学問には国境も地域性もなく、普遍性がある。理念的にはアジア経済学、アジア社会主義とかヨーロッパ経済学、ヨーロッパ社会主義というものはない。但し、地域的特性を研究する「地域学」は存在し、現実的にはアジア経済学、アジア社会主義が成り立ち、現代アジア学も存在し得る。ヨーロッパ(価値観)中心の政治経済学からアジア価値観を取り入れた政治経済学も成り立つ。
2 主権を絶対視するウェストファリア秩序から脱皮すべきである。東アジア新地域主義はポスト・ウェストファリアを求めるべきで、ネオ・ウェストファリア(毛利先生提起)を求めるべきではない。中国やインドが国家主権論からなかなか抜け出せないために、ポストでなくネオにしたと思われるが、それは半植民地、植民地を経験したためで、抜け出せないのは一時的である。脱国家論の面で、アジアがヨーロッパを追い越す可能性(アパルトヘイト、白人主義の克服などで)が十分にある。
3 東アジアモデルを確立すべきだ。東アジアモデルの特徴は政府(公共性の代表としての)の役割と市場原理の結合である。東アジア新地域主義にはこれが含まれるべきだ。日本式モデルは一国範囲内での政府と市場の結合であった。今求められているのは、国際化された政府と市場の結合、即ち国際協力機構と市場原理の結合を図ることである。日中韓三カ国はこの面で協力すべきだ。
4 市場アイデンティティーは東アジアになじまない。毛利先生は、地域化は無意識的、地域主義は意識的といったが、市場アイデンティティー下で無意識の地域化は進むが、それは意識的な地域主義ではない。東アジア新地域主義という以上、意識的なアイデンティティーを提起すべきだ。例えば「和を以って貴しとなす」「和諧社会」「和諧世界」などは東アジア的アイデンティティーである。(毛利先生が第4点で指摘した「異なった価値観への包容力、寛容性」などもこれに属する。)
5 各国の国家利益戦略にどう対応したらよいか。地域主義の目標――東アジア共同体の形成と現実的国家の利益擁護との関係を有機的に結びつける必要性がある。即ち各国の国家戦略を地域主義目標に導いていくのである。自国の狭隘なナショナリズムを克服し、相手国グローバリスト、リージョナリストの境遇に配慮することが不可欠で、各国の知識人連帯が必要である。
6 中国の東アジア共同体への関心を如何に高めるか。ここ数年、著しく低下している。起因は日本がASEAN10+3+3案を提起し、価値観外交を提起したからだ。渡辺利夫氏がASEAN10+3は中国がアジアでの覇権を確立する場と論断した。こういった論調に対し、東アジア共同体ができなくても、中国の発展は何の影響も受けない、中国はASEANを配慮して積極的支持を示したに過ぎない、という考え方が台頭した。現状が続けば、10年後には更に低下する。平和的環境を必要とする今こそ、積極的に中国に働きかけるべきだ。
7 中国の大国主義台頭をどう防ぐか。毛沢東は大国主義に反対しながら、大国主義の間違いを犯した。まだ中国が日本や韓国に期待する面があるうちに(例えば、現在は環境問題)、東アジア共同体の枠組みを作ることである。これが中国の国民を豊かにし、幸せをもたらす。中国のナショナリストは大国主義に陥りやすい。それを封じ込めるための国際的連帯が必要だ。
8 アジア通貨創出への積極性急低下をどう防ぐか。日本経済新聞「経済教室」掲載の筆者1998年論文は中国でも注目され、胡錦濤副主席(当時)がハノイでの国際会議で通貨協力の提言をするに至った。その後、日本の通貨専門家は積極的であったが、日本政府は消極的でどうしようもなかった。中国では人民元中心のアジア通貨圏構想が台頭しだした。次の通貨危機を避けるために、福田政権はアジア通貨協力に積極的姿勢をとることが望ましい。
9 日本と中国の指導権争いをどう防ぐか。韓国やASEANが主導的役割を果たすことである。1994年にARF(ASEAN地域フォーラム)ができた際、筆者は信濃毎日新聞に一文を寄せ、日本と中国は黒子に徹し、ASEANに表舞台で活躍させよと主張した。また2000年「国際経済学会」で、韓国、ASEANに主導的役割を果たさせるべきと主張し、多くの賛同得た。朱鎔基首相がASEAN+1とASEAN+3の会議で、ASEANの主導的役割を支持・尊重すると言明したことは心強い。(毛利先生指摘の第6点、李榮善教授「日中韓FTAの締結」に関連して。)
10 日本の外交戦略を早期に見直すべきではないか(「外交戦略不在」の克服)。中国の台頭と米中関係の改善と密接化(関与政策が主となり、世界的問題での協調の可能性が出てきた)によって、日本の戦略的空間は狭まっていく趨勢にある。対米対中自主外交確立によって、はじめて日本のソフトパワーは強化され、世界的外交が展開できるようになる。常任理事国入りも決して不可能ではない。日本有識者の努力が期待される。
11 朝鮮に対して漸進的変化を促す。米国、日本の「圧力と対話」に対し、韓国は「協議と支援」のコンセプトを提示した。これは中国の姿勢と一致する。北朝鮮の三つのシナリオ、1)金正日政権下の漸進的改革開放化、2)労働党体制下での漸進的改革開放化、3)労働党体制崩壊の混乱を経て改革開放化で、最善の選択は第一、次が第二、第三は絶対に避けなくてはならない。とりわけ、中国と韓国は受け入れられない。
2007年10月7日

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