今日はお蔭様で、たいへん実りあるシンポジウムができました。ご出席の皆様方に心からお礼申し上げます。内容は極めて豊富で多岐にわたっており、総括は不可能に近いです。私の感じた点を幾つか述べ、総括発言に替えさせていただきます。
先ずテーマの設定がよかったと思います。「戦略的互恵関係の充実化を目指して」は極めて時期に適った主題でありました。というのは、日中関係はいま重要な転換点にあるからです。改革開放後、1980年代は故大平首相と鄧小平氏の相互信頼に基づく蜜月時代を体験しました。大平外交哲学時代です。ところが1990年代後半から10年、諸般の事情により関係がギクシャクし、日中関係は低潮期に入りました。昨年10月、安倍晋三元首相の訪中により、両国間に戦略的互恵関係構築の方向性が確立され、日中関係は高潮期への転換が図られつつあります。本シンポジウムはそれを促進する役割を果たすことができます。
次に、二つの基調報告は素晴らしかったと思います。崔大使は共通利益の追求、相互信頼の醸成、戦略的パートナー関係と、主として国家関係の視点から戦略的互恵関係の構築を語られました。谷垣禎一会長は、共通利益の拡大、相互理解の深化、国民感情の改善と、主として国民レベルの視点から戦略的互恵関係の構築を語られました。何れも今後の日中関係発展を考える上で重要な示唆に富むものであったと思います。
第三に両国間に存在する問題に対して、理性的に対応することが指摘されました。そのためには首脳同士の相手の立場も配慮した対話が不可欠です。相手を客観的に見ないために起こる誤解が生じないように、常に心する必要があります。例えば石川好先生がおっしゃられた小泉前首相が行った数々の日中関係に有益なことへの評価は、確かに耳を傾けるべきものだと思います。
第四に、過度の国家意識を克服し、東アジア共同体の構築など国際的問題で日中が提携すべきだということが語られました。谷口誠先生は、日中間の競争意識が東アジア共同体の前途を危うくしていると指摘されました。フロアからも政治家が余りにもナショナリスティックであるというご批判が出ました。現今の国際政治は主権国家を単位としており、国益が重要であることには異存がないはずです。しかし、現在のように相互依存関係が深まっている国際関係においては、国際協調こそが国益に適うものであることを忘れてはならないでしょう。
第五に人的交流を促進し、日中が協力して人材養成に力を入れることが提案されました。 魏大名氏の提起された東アジア大学構想は実に魅力あるものです。実は私も15年前に、中国の賠償放棄への見返りとして、日本のODA毎年10億ドルを10年間提供して中日友好大学を作り、21世紀のある時期にはアジア大学に改名するよう提案したことがあります。朝日新聞(92年12月10日)が掲載してくれ、かなりの反響がありましたが、実りませんでした。今は、中国も資金があり、日中共同で作る、または政府と民間が共同で作ることが考えられます。
第六にハイテク分野での共同研究と協力を強化することが提案されました。「競争意識から協調意識へ」が提起され、賛同を得ました。日本は月に向けて「かぐや」を発射し、中国は「嫦娥」を発射しました。今後は宇宙開発分野でも協力を進め、他のアジア諸国の科学者も参加できるような道を拓くべきでしょう。中国の宇宙開発は単独で進め、著しい進歩を遂げていますが、国際協力への積極的参加も表明しております。ただ、米国主導の共同研究開発には態度を保留し、対等な協力関係を求めています。日中間では問題ないはずです。
最後に、最後まで聞いてくださった在席の皆様、大会のために尽力された学生諸君、および講演者、パネリストに重ねて御礼を申し上げ、総括・閉会の辞とさせていただきます。どうも有難うございました。
2007年11月2日

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