2007年12月5日付け「信濃毎日新聞」に掲載
シンガポールでの福田康夫・温家宝会談は、友好的雰囲気の中で、東シナ海ガス田問題の交渉加速化を確認した。この問題の具体的解決策はまだ模索中である。ある日本の友人が、共同開発利益(資源税相当部分)を環境対策資金として、中国の環境改善に使うようにしたらよいという考えを提起した。実によきアイデアである。
現在すでに中国が開発している4ガス田について、日本側は資金投入による共同開発への移行を提案し、中国側は拒否している。それは主権問題と経済利益配分に関わってくるからである。もし主権問題を棚上げにし、経済利益面では中国の環境対策資金に回すとすれば、日中両国国民の賛意が得やすくなる。新しく開発されるガス田、油田についても、その開発利益を環境対策に回すとすれば、画期的な日中協力体制ができるであろう。
環境問題には国境はなく、中国の深刻な環境問題は日本の問題でもある。その問題を解決するには、膨大な資金を必要とする。東シナ海のガス田・油田の共同開発で獲得した利益はすべて日中環境対策特別基金に回し、当初10乃至15年はすべて中国の環境対策に使い、その後は状況を見て、中国ばかりでなく他のアジア諸国への環境対策にも回すことも考えたらよい。日中協力による発展途上国への支援が始まるということだ。
ここ30年間、日中関係は蜜月時代と冷却期間を経て、今や第二の高潮期を迎えようとしている。1980年代の蜜月時代には、日本の対中ODAもあって、日本経済の中国での存在感は欧米に比して圧倒していた。ここ10年の冷却期間においては、日中経済貿易関係は順調な発展を見せていたが、伸び率は全中国平均の約半分で、日本経済の中国でのシェアは低下していった。今後の第三期において、ODAはなくても、環境対策特別基金などが起爆剤となって、日中経済協力を力強く押し上げる可能性がある。日本の培った環境技術などを中国大陸で活用する場が提供されるからである。
中国向け環境対策基金の設立によって、最も大きな利益を得るのは当然のことながら中国国民である。しかし、日本にとっても大きなメリットがある。一つは海洋汚染や大気汚染の日本への伝播を減少させることができる。二つ目には基金の共同運営ということで、日本の対中協力外交の有力なテコにすることができる。かつて、ODA提供が対中協力外交の有力な手段であったが、それに代わるものを手にすることとなる。三つ目に日本の環境産業の新たな発展を見ることができる。既存および新開発の環境技術には、日本においての応用は限界に来ているが、中国では大いに活用できるというものが少なくない。それに加えて、規模の利益が得られるメリットがある。
東シナ海ガス田での交渉において、上述した高次元の打開策が結実すれば、来年、洞爺湖で開かれるサミットにおいて、中国がより積極的な姿勢を示すこととなろう。即ち、ポスト京都議定書に向けて積極的な役割を果たそうとする日本外交に、大きなプラス要因となる。 2007年11月23日

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