福田首相訪中コメント3

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常任理事国入り条件を整備する福田対中外交
東シナ海ガス田問題が日本マスコミの中心的課題となっている。しかし、それは主権問題に関わる難題で、双方ともそう簡単に譲歩するわけにはいかない。そこで遠回しに主権問題を回避する策を講ずる必要がある。今回の首脳会談では「主権を棚上げにし、共同開発を進める」という原則を決め、具体的解決は少し時間を置くよう筆者は主張した。(「朝日新聞」11月22日掲載)今回、ガス田の共同開発について、「新たな共通認識」として4項目を確認しあったとのことである。その内容は私の主張に沿ったものが含まれるようである。来年春までに妥結し、胡錦濤訪日の重要な「お土産」持参の一つとなるであろう。

もう一つの「持参土産」になる可能性として、日本の常任理事国入りについて胡錦濤主席が前向きの姿勢を示すことが考えられる。福田首相はかねてから、日本が平和国家としての実績を踏まえ、国連の常任理事国になるよう努力すべきだと主張をしてきた。福田康夫、衛藤征士郎共著「一国は一人を以って興り、一人を以って亡ぶ」の中で、福田首相は「日本の発言権や影響力を大きくする」ために常任理事国入りを目指すべきだし、「飽くまでも話し合いで解決する国連にしていくよう努力し、国連の権威を高めるべき」と言っている。(28ページ)。しかしそれには、中国の協力と支持が絶対に必要である。福田首相はそれをよく認識している。
日中関係が悪化した2005年、日本は国連安全保障理事会の常任理事国入りを目指したが、中国の反対運動によって挫折した。(もちろん、他の原因もあるが。)外務省筋は「当時、中国の国際的影響力の強さを嫌というほど味わった」と述懐している。(「読売新聞」07年12月29日)今やこの教訓は、日本の多くの有識者の共通認識となっている。他方中国では、あのときの反対活動はやむをえなかったとしても、少し行き過ぎていたのではと反省する向きもあると聞く。日中双方の反省を踏まえて、福田首相は今回の訪中を通じて、日本の常任理事国入り環境を着々と整備している。、正に戦略的遠謀に基づいた行動をとっている。
現在、常任理事国入りをめぐる日本での論調は、大きく三つに分かれる。一つは日本の平和憲法維持と戦後の平和立国路線を堅持し、国際社会の支持を得て実現するというものである。もう一つは、現実の国際政治はパワー・ポリティックスと捉え、核を含む軍事力の強化によって実現しようとする。三つ目は日本の安全と生活が保障されればよく、強いて常任理事国になる必要はないと考える。福田首相は第一の考え方に属し、アジア及び世界にとって最も望ましい対応で、中国はこれを支持すべきである。
筆者はかねてから条件付き支持を主張し、日本がクリアすべき三つの前提条件と中国が支持する三つの理由を述べてきた。福田首相は今回の訪中を通じて、この三前提条件をクリアしたし、三つの支持理由もますます説明しやすいものとなった。三つの前提条件とは歴史認識問題と台湾問題と日米安保条約である。前二者はコメント2で述べた如く、殆どクリアした。第三の「日米安保条約が第三国に向けたものではない」、即ち中国を仮想敵国としたものではないことを明確にすべきだということについては、どちらかというと米国側の問題であり、米中関係の改善、六カ国協議の集団安全保障化などにより、漸次的解消の方向が明らかになりつつある。福田首相の唱える「日米同盟とアジア外交の共鳴」戦略煮によって、第三の前提条件もクリアされたと見てよい。
中国が支持する三つの理由とは、次のようなものである。
一つは戦後日本が平和立国の道を歩み、発展途上国の経済発展に貢献したことを前向きに評価すること。日本の侵略の歴史ばかりを取り上げるのではなく、戦後の平和的発展を客観的に評価すべきだ。これは昨年10月、安倍前首相訪中の際の「プレス共同声明」に書き込まれ、今回の福田首相北京大学での講演で、今後もこの道を歩むことがより一層明確となった。中国は日本の平和立国の道を歓迎し、国連での役割がより一層発揮できるよう、日本の常任理事国入りを心から支持すべきである。
二つ目は日本が真に中国の改革開放政策を支持し、支援してくれたことである。それはODAの提供ばかりでなく、知的ノウハウの提供も含まれる。故大平首相・鄧小平によって敷かれた相互信頼とそれに基づく日本の経済支援は、中国の改革開放政策を成功させる上で大きな貢献をした。ところが、ここ十年、政治関係がギクシャクしたこともあって、こういった積極面が余り語られなくなった。その上、ODA終結の仕方がたいへん拙く、後味の悪いものとなってしまった。日中関係好転を契機に、日本の果たした役割を正当にPRするチャンスがやってきた。
三つ目は東アジア共同体形成という未来志向で合意が達したことである。2004年12月、ASEAN10+3の非正式政府首脳会議で、長期的目標は東アジア共同体を構築することであることが決定された。アジア唯一の先進国日本が、中国に加えて常任理事国になることは、アジアの発言力を強化することにつながる。それは中国、ASEAN諸国を含む東アジア全体にとっても有益なことである。本来、中国は隣国として、積極的に支持すべきであった。ところが、日本でASEAN10+3会議は「中国が覇権を求める場である」というような論調が主流となり、共同体形成への妨害的工作が展開されることとなった。そのため、中国において日本への期待感が薄れ、日本がアジアのために国連で活動してくれるという見方は皆無となった。最近、福田内閣は2018年までに「東アジア経済・環境共同体」を構築するという構想を示した。日本のこの変化は、中国によい影響を及ぼすであろう。日中両国が共同体形成に向けて協力していく土台が形成された以上、中国が日本の常任理事国入りを積極的に支持する理由が十分なものとなった。
以上、中国が日本の常任理事国入りを支持すべき三つの理由はますます熟しつつあるが、中国当局がそれを実行に移すには、一定のプロセスを必要とし、世論作りが不可欠である。三ヶ月という期間は余りにも短すぎる。来年四月、常任理事国入り問題が胡錦濤主席訪日の際の十分な「お土産」とはなりえないだろうが、胡主席がより踏み込んだ言葉を使うことは十分に考えられる。
福田首相は今回の中国訪問を通じて、常任理事国入り実現を目指す環境づくりを着々と進めている。今日30日に福田首相は帰国し、これから日本での評価論議が活発化するであろう。果たしてどれだけの論者が、福田首相の描く戦略的外交を理解しているか、注目したいところである。     (2007年12月30日)

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このページは、凌星光が2007年12月30日 00:22に書いたブログ記事です。

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