決定的となった台湾政治社会潮流の変化
福井県立大学名誉教授 凌星光
1月12日に行われた台湾の立法院選挙は、定数113のうち、対大陸協調路線を主張する国民党が三分の二を超える81議席を獲得、台湾独立志向の民進党は僅かに27議席、国民党圧勝、民進党大敗の結果が出た。国民党に親民党などを加えた野党連合は85議席で、4分の3に達する。支持政党に票を投じる比例区の得票率は国民党が51.23%、民進党は36.91%であった。三月に行われる台湾総統選挙では、国民党候補馬英九に弾みがつき、国民党が勝利すること殆ど間違いない。
台湾の今回の選挙結果は、台湾の政治社会の今後の趨勢を見る上で、極めて重要な幾つかの点を明示している。
先ず、今回の選挙結果で、台湾独立の挑発手段は使えなくなった。台湾立法院の選挙制度は1990年以降段階的に制度変更がなされ、今回は定数を225から113に半減し、定数1-10数人の地方区と比例代表を組み合わせた制度から、小選挙区比例代表並列制に移行したが、今回はその最初の選挙であった。議席数の内訳は、小選挙区73、比例代表34、先住民区6である。任期は3年から4年に延長された。比例区は得票率が5%に達しない場合は議席が得られない仕組みとなった。そのため李登輝が率いる台湾団結連盟は議席数ゼロとなった。
また、全議席の三分の二で総統の罷免や弾劾が可能となったため、仮に総統選で民進党が勝利したとしても、立法院で国民党は単独で罷免できる。さらに四分の三では憲法改正の発議が可能になるため、国民党は他の小政党を引き入れれば、それもやり得ることとなった。
次に、国連加盟住民投票は不成立になる可能性が大きい。今回の立法院選挙で、同時に次のような住民投票が行われた。即ち、民進党提案の「国民党の不当資産の返還要求」と国民党提案の「政権腐敗の追及」の二案である。国民党は住民投票棄権の呼びかけを行い、それが功を奏して投票率が26%と過半数に達せず成立しなかった。3月22日の総統選では、民進党提案の「台湾名義での国連加盟」と国民党提案の「中華民国などの名義での国連復帰」の二案の住民投票が行われることになっているが、投票率が50%に達せず成立しないという可能性が大きい。
国連加盟の住民投票では、国民党内部で意見が二つに分かれた。民進党の挑発に対して、連戦氏ら党主流はそれにまどわされないで、正攻法で進むよう主張した。それに対し、人気を気にする馬英九は中華民国名義の国連加盟案を対案として提起した。今回の選挙結果は、連戦ら党主流の主張が正しかったことを立証した。立法院選挙での住民投票ボイコット成功により、国民党は総統選での住民投票ボイコットを推進するに違いない。
第三に、台湾世論の情緒的雰囲気から理性的雰囲気への変化は決定的なものとなった。8年前、李登輝は国民党の主席でありながら、民進党の独立派を支援した。その後、国民党を離れてからも、陳水扁に協力して台湾独立志向の情緒的雰囲気を醸成していった。台湾のかなりの人たちはその煽動に影響され、世論の台湾独立志向が強まっていった。ここで指摘すべきは、大陸当局が台湾独立勢力の挑発に乗ってしまい、中間派を独立志向に追いやったことも重要な要因であった。
ところで、胡錦濤政権になってからは、台湾の民意を重視した一連の政策をとるようになり、陳水扁の挑発にも冷静且つ理性的に対応するようになった。その結果、4年ほど前から、時代に逆行する台湾独立の情緒的動きは徐々に弱まり、高度成長を遂げ、国際的にもますます影響力を拡大していく中国大陸の動きを冷静且つ理性的に見る動きが強くなってきた。それを背景に、2005年の連戦氏大陸訪問、宋楚喩氏大陸訪問が実現し、両岸関係は新しい展開を見せる様相を呈してきた。
それに対し、陳水扁は引き続き「台湾人意識」を煽って「中国離れ」を加速する戦術をとった。しかし、このような時代に逆行する動きは、台湾世論の支持を得られず、今回の選挙結果はそれが完全に失敗したことを物語っている。ここ4年間、漸進的に起きた世論の変化は、ここに至って全く定着したと見ることができる。日本の一部台湾独立志向支持者には、民進党の再奮起や台湾政界再編(国民党分裂)に期待をかけるものもいるが、台湾世論の理性的流れに逆行的変化が生ずることは先ずないであろう。
2008年1月14日

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