内政と外交の好循環を生む中国外交への影響
福井県立大学名誉教授 凌星光
今回の選挙を通じて、台湾世論が独立志向にノーを突きつけたことは重要だ。中国大陸の目覚しい発展、胡錦濤政権のソフトパワー重視、中国の国際的影響力の拡大、台湾経済の大陸依存度の増大などの要因がその背景としてあろう。今後、誰が総統になろうとも、台湾の民意を重んじ、大陸との対話重視の姿勢をとることとなろう。もし台湾問題が解決されれば、中国の最大内政問題が解決されることを意味し、同時に最大の対外関係障害が取り除かれることを意味する。それゆえ、中国の外交に良き影響を及ぼし、アジアの平和と安定に大きく寄与する。
先ず中国がより一層国際的責任を負う国となる。台湾統一問題が、過去50年間、とりわけここ10年来、中国の平和外交の展開を縛り付けてきた。台湾問題は国内問題であり、平和共存五原則は適用されないといっても、国際的に説得力に欠ける面があったからである。その障害が取り除かれることになれば、中国が提起している平和発展論、世界和諧論を対外関係において展開しやすくなり、中国外交の国際協調路線は大きな発展を見ることができる。
次に中国政治の民主化が促進され、内政と外交の好循環が生まれる。今回の選挙結果は、中国大陸の人たちに台湾の民主政治の成熟さをアナウンスする効果がある。中国大陸の基層単位で行われている民主的「普通選挙」がより高い行政レベルに移行するテンポを速めるであろう。中国が行われようとしている政治改革に弾みがつく。両岸関係を含む国際環境の安定が中国の政治改革に不可欠だからである。それが進めば国際的によい影響を与え、中国のソフトパワーを高めることになる。
第三に、中国国内の民族問題解決にプラス要因となる。中国は漢民族と55の少数民族からなるが、一般的に言って、少数民族政策は成功を収めている。しかし、チベットと新疆では独立問題を抱えており、それが台湾の独立志向と結びついて問題を複雑化している。経済の発展の和諧社会政策によって矛盾は緩和されること間違いないが、問題は海外におけるか活動とその国際的影響である。台湾独立問題の解消によって、チベット、新疆問題の海外要因が緩和され、周辺諸国との関係改善・強化がやりやすくなる。
第四に、安全保障面での国際協力を促進する。今回の選挙結果で、台湾海峡を巡る軍事対立は殆ど解消する。人民解放軍は国防軍と改称されようし、軍事的国際協調がしやすくなる。とりわけ、日米軍事同盟の中国への脅威感は殆どなくなり、好転しだした日中友好関係と戦略的互恵関係の構築を大いに促進する効果をもたらす。安全保障面での中米間、中日間の交流に一層弾みがつこう。
第五に、東アジア共同体の形成を促す。2004年のASEAN10+3(日中韓)非公式首脳会議で、将来目標として東アジア共同体の構築を提起された。ところが台湾が含まれていないため、中国と日本との協調は陰に陽に影響を受け、スムーズな進展を見ることができなかった。両岸関係の平和と発展の枠組みができれば、台湾の参加も可能となろう。今後、経済、外交、軍事など各分野で、日中間の協調がしやすくなり、東アジア共同体の構築を促すことができる。
最後に、世界の華僑華人の団結が強化され、中国外交への補助作用が強まる。海外の華僑華人、とりわけ改革開放後出て行った新華僑華人は、居住地と母国との重要な橋渡しをしてきた。しかし、対立状態にある両岸関係は、海外の華僑華人を二分し、その力は削がれる。とりわけ青年たちの間での疎遠は深刻である。両岸関係が和解に進めば、眼に見えない厚い壁は取り除かれ、華僑華人の一体感が進み、橋渡しの役割はこれまでになく強化される。
以上、中国外交に与える好ましい点を方向性として列記したが、それが実際にすぐ行われ得るかと問われれば、そう簡単に実現できるものではない。多くの努力を必要とする。
2008年1月16日

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