(福田首相への提案)
一 北京オリンピックとチベット問題について
チベット騒乱問題が起きて、北京オリンピックの聖火リレーは困難に直面している。しかも懸念すべきは、中国国内のナショナリズム高揚と海外の対中国感情悪化の悪循環が生じつつあることである。とりわけ反フランスデモが起きたことは、北京オリンピックの土台まで揺るぎかねない。中国当局も事態を重く見て、今日(19日)の夜からは論調を少し変えつつある。近いうちに、中国当局は理性的な文書を発表し、事態の改善を図る可能性がでてきた。オリンピック前に、中国当局とダライラマが対話することは難しかろうが、一定の条件を満たせば対話に応ずるというかなり具体的な前向きの姿勢を示す可能性もあると見ている。また中国当局としては、胡錦濤の訪日を悪循環から好循環に転換させるターニングポイントにすることが望ましい。福田首相としては、中国のこの方向への転換努力を評価し、北京オリンピック成功のための国際的環境づくりに全面的に協力するという態度を示すことが望まれる。
二 東シナ海ガス田問題について
この問題は「係争棚上げ」を「主権棚上げ」の方向に発展させてのみ解決できる。「主権棚上げ」とは線引きをしないで、共同開発することである。日中両国に
存在するナショナリズム、国家の主権を前提とする現実の国際政治などから見て、「主権棚上げ」を実行に移すことはそう簡単ではない。しかし、EUの
形成からも分かる通り、歴史の流れは主権超克の方向にある。日中双方には東アジアにおけるモデルケースをつくる精神が求められる。問題の解決に当たって
は、二段構えが適当と考える。つまり第一段階は原理原則の方向性を示すことで、今回の共同文書に盛り込む。第二段階は閣僚クラスで三箇所(中間線の中国
側、係争地域、大陸棚延長線の日本側)の協力プロジェクトを設定する。日本側海域では石油、天然ガス資源は望み得ないであろうから、希少鉱物資源の共同調
査、共同開発が考えられる。現在のように主権が絡む交渉となると、双方とも妥協の余地は小さく、解決は難しい。主権棚上げの交渉であれば、主として利害関
係の調整であり、妥協の余地は大きくなる。
三 常任理事国入り問題について
筆者は2001年
に、日本が三つの条件、すなわち歴史認識問題、台湾問題(独立反対)、日米安保条約問題(第三国を対象としない)をクリアしたら安保理加入に同意すべきと
いう「条件付き賛成論」を内部研究報告で打ち出したことがある。福田政権になって、この三点は基本的にクリアされつつある。しかし、まだ不安定であるた
め、中国国民を納得させるところまでにはなっていない。それ故、常任理事国入り支持を明文化することは困難であろう。しかし、「現在の国連憲章には第xx
条(「旧敵国条項」}のような現状に合わないところがあり、日中両国は共に国連改革に取り組む努力をする」というような文言を共同文書に書き入れることは
できると考える。それは実際には、日本の国連常任国入りを支持する方向に進むことを意味し、日本国民によい影響を与えるであろう。また中国国民には、日中
関係が引き続きよい方向に進むことを前提としているというアナウンスをすることで、殆ど抵抗なく受け入れられるであろう。
四 台湾問題について
国民党の勝利によって、台湾独立の危機は、一応、立ち消えた。昨年末、福田首相が訪中した際、周囲の反対を押し切って、「国連加入の住民投票を支持せず」 を表明したことは時宜を得たものであった。現在、中国当局は日本の台湾に対する態度を、より明白な形で文書にするよう求めている。それに対し、日本には反 対の声が強くあるが、日本の前途を考えた場合、また日本の常任理事国入りなどで中国の支持を得るための環境づくりという視点から見た場合、福田首相が政治 的決断をする必要があると思われる。それは必ずや後世の肯定的評価を受けることとなろう。今後も米中間の戦略的やり取りは強化されようし、大陸?台湾関係 も深まっていく趨勢にあり、このカードを切る時期に来ていると思われる。もし今のチャンスを逃し、今後、両岸関係が大いに進んだ後においては、このカード の賞味期限は切れることになる。中国国内では、日本の常任理事国入りは避けられず、中国が適当な時期にこのカードを使わないと、カードの賞味期限が切れて しまうという論議がかつて交わされたことがあると聞く。台湾問題で、同じことが日本に当てはまると考える。
胡錦濤国家主席と福田康夫首相の政治的決断によって、現在の難局を、是非、突破していただきたい。
2008年4月19日夜

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